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「エコ」で「ブラック」な企業になっていませんか?EUが規制を強化する「グリーンウォッシュ」、これからの「サステナブル」とは



こんにちは。繊維製品品質管理士でもある、松尾です。

先日、EUが「グリーンウォッシング」への規制を強化 「環境にやさしい」「エコ」はブラックリスト入り – WWDJAPANという記事を目にしました。

「環境にやさしい」、「エコ」がブラック?まったく反対なイメージの言葉ですが、どういうことでしょうか?EUが規制を強化する「グリーンウォッシュ」について解説しながら、改めて「サステナブル」とは何か、を考えていきたいと思います。

この記事で得られること

  1. 「グリーンウォッシュ」が何かわかる
  2. EUの情勢がわかる
  3. 各種国際認証の種類がわかる

「グリーンウォッシュ(Green washing)」とは

グリーンウォッシュとは、エコをイメージさせる「グリーン」と「ホワイトウォッシュ」(ごまかす、うわべを繕う)を組み合わせた言葉で、消費者の誤解を招く表現を用いて、「この商品やサービスは環境に良い」と思わせるビジネス戦略です。

(朝日新聞デジタル「グリーンウォッシュとは?問題点や事例、規制、すぐできる対策を解説」2022.5.18公開)

美辞麗句でごまかして、漂白ならぬ、漂緑された、というイメージでしょうか。

「エコ」、「オーガニックコットン100%使用」、このような言葉が書いてあると、つい安心して買ってしまったり、少し他の商品より高くても、買ってしまう。いいことをしている気になる。とても良い商品だと思ってしまう。この消費者の心理を利用するものです。

もちろん、本当にエコで、本当にオーガニックであれば、何も問題ありません。ですが、知らないうちに自社が「グリーンウォッシュ企業」になっていないでしょうか

グリーンウォッシュの事例

グリーンウォッシュの事例

出典:BBC NEWS JAPAN「 環境にやさしいと宣伝、でも実は……「グリーンウォッシング」を見抜く7つの知識 – BBCニュース

航空会社・自動車業界の事例

2019年には、アイルランドの格安航空ライアンエアーが十分な証拠を示さずに出した、「欧州で最も排出量が少ない航空会社」という広告を禁止。韓国の自動車大手ヒュンダイの「車が空気をきれいにする」というキャッチコピーも、誤解を与えるとして禁止された。
(BBC NEWS JAPAN「 環境にやさしいと宣伝、でも実は……「グリーンウォッシング」を見抜く7つの知識 – BBCニュース」2022年10月25日確認)

車が空気をきれいにする、というのは明らかな嘘です。これでは、ユーザーは乗れば乗るほど地球をきれいにする、という免罪符を手にした気になり、車の使用量が増えてしまうことにもつながりかねません。

原材料の事例

原材料について、「自然派」、「オーガニック」、「エコフレンドリー」とうたっている製品が、実際にはこうした原材料を一部しか使っていない例も、この部類に入る。
(BBC NEWS JAPAN「 環境にやさしいと宣伝、でも実は……「グリーンウォッシング」を見抜く7つの知識 – BBCニュース」2022年10月25日確認)

最近では「オーガニックコットン使用」と書いてあるものがいたるところで目に入るようになりました。しかし、Textile Exchange(国際NGO)のレポートによると、全ての綿花のうちオーガニックコットンのシェアは1.4%しかありません。

オーガニックコットン使用

出典:Textile Exchange / Organic Cotton Market Report October 2022

「certified(認証された)」という数字ですから、認証されていないものは数字に含まれていないことになります。それにしても、犬も歩けばオーガニックに当たるような世の中になってきたというのに、1.4%とは、かなり乖離を感じる数字です。本当にオーガニックなのか、偽装していないか、消費者として見分けるためのポイントがあります。

グリーンウォッシュを見分ける10のチェックリスト

グリーンウォッシュを見分ける指標として、イギリスのFuterra Sustainability Communicationsが10のチェックリストを公開しています。

グリーンウォッシュ

(Futerra Sustainability Communications「 Understanding and Preventing Greenwash:A business Guide」2022年10月21確認)

これを、Soichiroなりに訳してみました。少し意訳しているところもありますので、正しくは原文をご覧ください。

  1. 曖昧な言葉が使われている(例:エコ・フレンドリー)
  2. 商品は環境に良いが、企業として環境に負荷をかけている(例:エネルギー変換効率の良い電球を作りながら、工場から排水を流し川を汚している)
  3. 根拠がないにもかかわらず、環境によさそうな写真を使っている(例:煙突から花が咲いている)
  4. 全体的に環境にはよくないのに、たった一つ、ちょっとだけした環境に良いことを声高に主張する
  5. 低レベルな、どんぐりの背比べをしている。(~業界ではNo.1など)
  6. 信頼性に欠ける表現をしている。危険な商品にグリーンラベルをつけたところで、安全な製品になるわけではない。(例:エコフレンドリーなタバコ)
  7. 専門用語でごまかしている。一般の人には真実がわからないようにしている。
  8. 第三者認証の捏造。自社独自に作っている指標。
  9. 証拠がない。本当かもしれないが、エビデンスがない。
  10. あからさまな嘘、データの捏造

企業としては、これらのことを行わないように注意することが必要です。景品表示法の優良誤認の内容と通じる内容ではないでしょうか。また、意図せずとも、やってしまいがちなアクションでもあります。改めて当社でも気を引き締めなければならないと感じます。

グリーンウォッシュ企業にならないために

EUの方針では、具体的に下記の例が挙げられています。

  • 耐久性を制限する要素について言及しない
  • 「環境にやさしい」、「エコ」、「グリーン」といった曖昧で検証不可能な言葉を用いた訴求
  • 実際には商品の一部にしか関係していない環境配慮の取り組みによって商品全体をサステナブルだとうたうこと
  • 第三者機関や公的機関による検証を行っていない任意のサステナブルラベルを付けること

(参照:WWD「EUが「グリーンウォッシング」への規制を強化 「環境にやさしい」「エコ」はブラックリスト入り 」2022年4月28日公開)

根拠のないことは言わない、嘘はつかない、というのは大前提として、EUは、信頼性のある第三者認証を得ることが大事だと言っています。日本では、第三者テスト機関にテストを依頼するケースが多いかと思います。グローバルな第三者認証には、どのようなものがあるのでしょうか。

繊維・アパレル業界の第三者認証

ここから、繊維・アパレル業界の第三者認証をいくつかご紹介します。

OEKO-TEX® エコテックス

エコテックス

出典: エコテックス

エコテックス®は、世界最高水準の繊維製品の安全性をはじめ、環境や働く人にも配慮した生産体制がとられているかを厳しくチェックする、人と地球に優しい繊維製品の証です。
(一般財団法人ニッセンケン品質評価センター「エコテックスとは」2022年10月24日確認)

エコテックスは、世界100ヶ国以上、20万件以上の豊富な実績があります。
> プロダクツ – 繊維の安全証明「エコテックス®」-日本公式サイト-

ヨーロッパでは、新規取引の際、エコテックス®ラベルの有無を確認されることも多く、消費者にも高く認知されているといいます。ベビー用品などでこのマークをご覧になった方も多いのではないでしょうか。

認証審査について

EU以外では唯一、日本のニッセンケン品質評価センターが認証機関となっています。

認証取得は以下の3ステップで行われます。

  1. 書類審査
  2. 分析試験
  3. 訪問監査

分析試験用試料を受領後、認証書交付まで約1か月、認証登録料(認証ラベル使用料含む) は年間12万円(税別)、分析費用が別途かかります。また、認証は1年ごとに更新が必要です。

詳しくは、認証取得について – 繊維の安全証明「エコテックス®」-日本公式サイト-をご覧ください。

bluesign®ブルーサイン

ブルーサイン

出典: Bluesign

ブルーサインは、繊維・アパレル業界で、環境・労働・消費者の観点において、持続可能なサプライチェーンを経た製品に付与される認証です。スイスのbluesign technologies agが運営・管理を行っています。

Global Organic Textile Standard(GOTS)ゴッツ

エコテックス

出典: Global Organic Textile Standard

対象は衣服はもちろん、糸・生地などの中間製品や、アクセサリー、ホームテキスタイル、寝具、パーソナルケア製品など幅広い製品が対象です。 “認証済みのオーガニック繊維が95%以上使われていることを示すラベルと、70%以上95%未満を示すラベルの2種類がある。原料だけでなく、サプライチェーンにおける環境負荷や人権配慮に対しても規定がある
(繊研新聞社「【ファッションとサステイナビリティー】国際認証やラベル、プログラム、枠組みを知ろう | 繊研新聞」2020年11月30日)

有機農業の基準はなく、IFOAM(国際有機農業運動連盟)が認めた有機農業の基準となります。オーガニックに移行期間中も含まれるようです。

2021年のGOTS_Annual_Reportによると、12,000以上の施設が認証されています。2019 年には 7,765施設、2020年には10,388施設でしたので、認証施設は年々増加しています。 (参照:GOTS 年次報告 2020 GOTS認証件数初めて1 万超え

認証施設

EUを除き、GOTS認証施設数が多い国は、インド(3,000件)、トルコ(1,777件)、中国(1,577件)がTOP3となり、2019年に2位だったバングラデシュは認証施設の数を減らしています。一方、トルコは2019年の1,107件から大幅に増えています。日本はREST OF ASIAの中に含まれ、まだまだこれからといえるでしょう。

GRS認証・RCS認証

GRS認証・RCS認証

GRS認証(グローバル・リサイクルド・スタンダード)、RCS認証(リサイクルド・クレーム・スタンダード)は、アメリカに本部を置く国際NGO「Textile Exchange(テキスタイル・エクスチェンジ)」による、リサイクル製品の国際的な認証プログラムです。

テキスタイル・エクスチェンジとは

テキスタイル・エクスチェンジは、素材を少しでも環境や人権に配慮したものに変えて行こうと活動しており、メンバーは50カ国以上、ルイ・ヴィトン、GUCCI、H&M、ZARA、パタゴニア、NIKE、ルルレモンなどのグローバル企業から農家まで750以上の企業が参加しています。メンバーになれば認証されるわけではなく、認証機関へ申請し、審査を受ける必要があります。また、製品ごとに登録・認証が必要です。

8つの認証

テキスタイル・エクスチェンジの認証規格は、全部で8つあります。

GRS認証・RCS認証

  1. CCS(Content Claim Standard コンテント・クレーム・スタンダート)…基準。トレーサビリティやサプライチェーンの各段階における管理等、生産の各段階で検証。
  2. OCS(Organic Content Standard オーガニック・コンテント・スタンダード)…オーガニック製品に関する認証
  3. RCS(Recycled Claim Standard リサイクル・クレーム・スタンダード)…リサイクル素材に関する認証。最終製品に含まれる原材料に5%以上のリサイクル材料を含む。
  4. GRS(Global Recycled Standard グローバル・リサイクル・スタンダード)…リサイクル素材に関する認証。最終製品に含まれる原材料に20%以上のリサイクル材料を含む。
  5. RDS(Responsible Down Standard レスポンシブル・ダウン・スタンダード)…ダウンとフェザーに関する認証
  6. RWS(Responsible Wool Standard レスポンシブル・ウール・スタンダード)…ウールに関する認証
  7. RMS(Responsible Mohair Standard レスポンシブル・モヘア・スタンダード)…モヘアに関する認証
  8. RAS(Responsible Alpaca Standard レスポンシブル・アルパカ・スタンダード)…アルパカに関する認証

RCSとGRSの違い

GRSは、RCSの基準に加え、「Social(社会)」・「Environment(環境)」・「Chemical(化学)」の項目があります。より厳しい基準といえるでしょう。

認証審査の方法

認証審査については、テキスタイル・エクスチェンジの認可を受けた認証機関が行っています。日本でもケケンの他、いくつかの認証機関があります。初回認証後も、1年ごとに認証機関の監査が義務付けられています。

認証にかかる費用は、Textile Exchange Certification Fee Structure 2023をご覧ください。

ブームから選別の時代へ

「正直ここまでできない」という気持ちもよくわかります。第三者認証を取るには、人的にも費用的にもリソースが必要です。費用対効果の判断や、どうしてもその枠組みの中に入れない特別な事情もあるかもしれません。

とはいえ、アパレル業界・繊維業界以外でも、「ESG投資の実態は “グリーンウォッシュ”にメス【経済コラム】 | NHK」にもあるように、グリーンウォッシュ=“名ばかりESG投資”の排除にドイツ当局が乗り出したと話題になりました。ブームから選別の時代が始まったと言われています。

原材料の事例でも述べたように、1.4%のオーガニックコットンとほぼ同様の生産方法で、認証を受けていないだけのコットンもあるかもしれません。第三者認証を取らない場合は、何をもって証明をするのか、第三者認証以外の戦略を考えることも必要です。最低限、消費者に誤解をさせない努力は必要だと考えます。

サステナブル=全方位に優しさがあふれる世界

第三者認証の幅広い審査項目を見ると、改めてサステナブルとは何か、を考えさせられます。誰かや何かが無理をしていると、一時は良くても、事業継続は難しいのかもしれません。誰にも負荷をかけない、嘘をつかない、嫌な思いをする人がいない。誰に対しても優しくある。そこに幸せや楽しみが生まれていってほしい。子どもたちがこれから生きていく社会はこうあってほしいと思います。

もちろんそんなことは分かっていてそれが難しい。理念でモノが売れるのか、という思いもあるでしょう。最後に社会解決型事業の事例をいくつかご紹介します。

理念でモノが売れるのか?社会課題解決型事業の事例

誰かにだけやさしい世界から、みんなにもやさしい世界へ。やさしいてぃーしゃつ

やさしいてぃーしゃつ

出典: やさしいせいふく

今や学校行事では欠かせない、オリジナルTシャツ。この格安Tシャツは、どこでどのように作られているのだろう。疑問を持った学生たちは、服がどんな労働環境で作られ、地球環境にどんな影響を与えながら作られているかを知りたい、と行動を開始しました。インドでは、日給75円で働く少女がいます。「自分たちの大切な思い出に寄り添う服は、自分たちと同世代の子どもが泣きながら作っているかもしれない」、と知りました。彼らは、インドの工場をオンラインで見学し、どこで誰がどのように服を作っているのか、労働環境を実際に確認し、工場を選定したそうです。

「やさしいてぃーしゃつ」は、2022年4月1日から、学校団体向けのイベントTシャツとして販売開始。国際認証(GOTS)を取得した綿と生産工程でつくられています。

やさしいせいふくは、フェアトレードや寄付を通し、インドの綿農家の有機農法への転換支援や農家のこどもたちの就学・奨学支援も行っています。

経産省に提言に行ったり、多くの企業から講演依頼・コラボ依頼もきているようです。Tシャツを作って売ることは目的ではなく、伝える手段と位置づけていますが、大人が見ないようにしてきた問題にしっかりとメスを入れようとしている若い世代。大人は彼らから選ばれるモノづくりをしていかねばならないと気づかされます。

やさしいせいふく団体概要

やさしいせいふくは、Good for People, Good for the environment, Good for the worldを理念に、人にも環境にもやさしい服づくりを広めることを目的とした中高生の任意団体です。大量生産大量廃棄の現代社会で、服は消費するものではないという価値観を若い世代に発信することで、持続可能な社会の進化に貢献します。
(やさしいせいふく プレスリリース「Schoolstrike for textile – やさしいてぃーしゃつ」)

自分が選んで決める私らしい生活づくり「irodori」

「irodori」

出典: オンリーワンの魅力が胸元を飾る。大切なマイ「ちくちくブローチ」 | 石見銀山 群言堂 公式サイト │ オンラインストア

世田谷区立玉川福祉作業所の自主生産品ブランド「irodori」。「自分が選んで決める私らしい生活づくり」をコンセプトに、暮らしが楽しくなるアイテムを作っています。世界遺産で知られる石見銀山に拠点を置き、衣・食・住を通して、人が心地よく暮らすための提案を発信している「群言堂」グループのショップでも取り扱われています。

障害者メディアコトノネ

出典:社会をたのしくする障害者メディアコトノネ「仕事が、自分も知らない「自分」に気づかせてくれるー群言堂×玉川福祉作業所の「ちくちくブローチ」

私も実物を見たことがありますが、商品は非常に繊細で、かつ、エネルギーにあふれていました。何より大事なのは、作り手のバックグラウンドを知らなくても、「欲しい」、「素敵だ」と思える、商品の強さがありました。これこそ、モノづくりの原点なのかもしれません。

最後に

「環境にやさしい」、「エコ」がブラックになるのか?というところから、グリーンウォッシュと第三者認証についてご紹介しました。いいことをしているつもりで、ブラックになっていないか?と自分に日々問い続けることが大事です。

そして、「サステナブルである」、ということは、「選ばれ続ける」・「選び続ける」ということでもあります。「買う」という行為は、モノを手に入れるだけではなく、その背景への賛同と応援でもあります。作る人・売る人・買う人・使う人が分断するような、誰かの一方的な活動ではなく、生産から消費・リサイクルまでをひとつのサイクルとして、やさしさと幸せを繋げてまわしていけるよう、私自身も日々考えていきたいと思います。

※英語表記では「Green washing」となっていますが、この記事内では、引用を除いて日本語表記は「グリーンウォッシュ」としています。


参考

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