ジオラマ作り方<シュノンソー城>
こんにちは!Soichiroのデザイン担当のアオキです。
フランスのロワール地方は古城が多く、世界遺産に登録されています。その中でも人気のあるシュノンソー城のジオラマを作ってみました。
ジオラマの作り方の概要
ジオラマというとお城や鉄道模型のレイアウト、戦車などを活かしたミリタリーモデルなどさまざまなジャンルがあります。多くの場合は鉄道模型やプラモデルを流用しながらそれを取り巻く情景をいかにリアルに再現するかがポイントになります。 制作にあたっての主なプロセスは下記のようになります。
- 完成したイメージを膨らませながらラフスケッチを描き、アイデアを絞りこむ。
- 土台の大きさを決める。
- 参考になる資料を集める。書籍、自分で撮影した写真、インターネットなどを活用する。
- 完成したイメージを膨らませながらラフスケッチを描き、アイデアを絞りこむ。
- 完成図面を描き、構成部品の配置を決める。
- 個別の構成部品の大きさを決め、図面を作る。
- 模型制作にあたって素材や道具を用意する。
- 土台となる部分を作る。ここに加飾をする。
- 構成部品を作り込む。リアルに見える加飾をする。
- 必要に応じて、土台に金属製のネームプレートを付けたり、豪華に見えるよう特注の透明アクリルカバーを被せる。
材料とツール
作るジオラマにより多種多様ですが、今回使用したものは下記のようなものです。
材料
紙:モデルボード、ケント紙、カラーペーパー、カラーコピー紙、紙ヤスリ、紙粘土
木材:半円柱、三角柱
プラスチック:アクリルパイプ、カラーコピーした糊付透明フィルム、ビーズ
金属:虫ピン
画材:アクリル系絵具、パステル、木パウダー(鉄道模型ジオラマ用)
糊:セメダイン(発泡スチロール用)、木工用ボンド
樹木:建築模型用を流用し木パウダーを糊で付着
人形:建築模型用を流用し着色
ツール
NTカッター:切れ味をキープすること
カッティングマット:カッター使用時のテーブル等の作業面を保護
定規:透明三角定規、金属製定規(カッター使用時)
のこぎり:木材用、プラスチック用糸鋸
筆と絵具皿:アクリル絵の具用
筆記具:シャーペン、ボールペン
PCとプリンター:画像閲覧と素材印刷用
PCソフト:photoshop,illustrator,google earth
シュノンソー城のジオラマ制作プロセス
完成イメージを検討する
シュノンソー城の本館と前庭と見張り塔、そこを結ぶ橋。森のある対岸の遊歩道。城の下を流れる川を表現することにしました。
ジオラマの大きさを決める
たまたま家にあった使用していない絵画の額があり、この上にジオラマを再現することを思いつきました。大きさは660x320mmでここに構成部品が収まるようにしました。
実物の資料を収集
その為には実物の写真を収集し、細部を研究する必要があり、結果として100枚以上の画像を見ました。
本館の再現
西洋の城など作ったことがないので、どうしようかと思っていた時に通販でHeart Art Collectionシュノンソー城の紙製の3Dパズルの模型を見て、とりあえず購入してみました。しかし実物はジオラマに配置するには大きすぎるのと作りが雑で、70%の大きさに縮小して作り直しました。この際、できるだけ多くの本物の写真を参照し、細部を修正しつつ作り込んでいきました。 主なプロセスは下記のようなものです。
- 3Dパズルの模型の型紙をカラーコピーで70%の大きさに縮小したものを用意。
- モデルボード(建築模型で使われるスチロールを紙ではさんだもの)で躯体を作る。
- 円筒形状の部分はスチロールのパイプを加工する。
- 凸形状の部分は木製の三角柱や半円状の角材を加工する。
- 完成した躯体に70%の大きさに縮小したカラーコピーを各部分に合わせてカットし貼り付け。
- 修正、追加が必要な部分を実物の写真を参照しながら作り込む。
本館の完成です。かなり手を入れたので、実物に近くなってきました。
前庭、橋、見張り塔の再現
大きさを決めるにあたり、google earthの画像や存在する絵図から寸法を読み取りました。
建築模型などで使用されるモデルボードで構造体を作る。カッターで素材をカットする際、直角にカットしないと歪み、隙間が生じる。円筒部はトイレットペーパーの芯を流用。
写真などからキャプチャーした素材をphotoshopで平面図になるように加工し、カラーコピーで印刷する。
印刷した素材を構造体に貼り付ける。必要に応じて植栽や尖塔なども作り込む。
遊歩道と川の再現
川の反対側にある土手には遊歩道があります。この部分は土と岩の質感を表現する為、紙ヤスリをアクリル系絵具で塗装。人が歩いた跡は紙ヤスリをこすって再現しました。
樹木は鉄道模型のジオラマなどで使われるものを流用しましたが、そのままでは生っぽいので木パウダーをまぶして自然な感じにしています。
川の水面部分は透明ガラスの裏側に青い紙を敷いてそれらしく見せ、ボートのミニチュアを作成して雰囲気を演出しました。
実物とジオラマの比較
本館と前庭
やはり本館の建物だけでなく周りの構造物を再現することによりぐっとリアル感が高まります。 完成時の喜びもひとしおです。
本館からの突起部
この部分が何だったのかはよく分かりません。本館の下部から水面に伸びている突起部分とそれに繋がる建物の一部が崩れた部分まで再現しました。
水面下に沈んでいる部分もリアルに再現されていると思います。
煙突と屋根
建物の凹凸部分もリアルさにこだわりました。煙突の配置はgoogle earthで上空から見た画像で位置を特定し再現。尖塔の先に伸びているポール部分は虫ピンにビーズを挿入してから黒塗装したら本物に近い感じになりました。
鐘つき塔
この部分は模型での再現に苦しんだところです。当初、針金と紙粘土での再現を試みたが失敗。 そこでアクリルの透明パイプに透明フィルムに支柱を印刷したものを巻き付け、段差の所は紙粘土で繋いだらうまくいきました。
本館入口
本館入口の上にあるバルコニーの形状および階段を作り込むことによりリアルになりました。人の模型を配置すると雰囲気がぐっと増しました。
遊歩道側から見る
右の煙突部に繋がる壁面にレンガのパターンを印刷した紙を貼り付けてみました。
見張り塔
円筒の直径にあたる素材が無く、トイレットペーパーの芯に紙を巻き付けて調整しました。
塔の側面に付いている細かい凸模様の再現は、実際の写真からキャプチャーしたので平面でもリアルに表現。塔の側面の経年変化によるまだら模様はパステルの粉を塗り付けることにより再現しました。今年現地で本物を確認したら、ここは結構くすんだ色でした。
本館側面から見る
この建物は増築を繰り返した痕跡が見られ、形の連続性がない部分があることも発見しました。
遊歩道の木陰から見る
遊歩道の木陰から散歩する人を通じて城をみた時、どう見えるかもジオラマでは体験できてしまいます。
その後のジオラマの制作
シュノンソー城の後も、フランスやドイツの古城のジオラマを作りました。
またフランスのロワール地方の世界遺産に登録されている城を取り上げて、「青木正英の西洋古城ジオラマの世界」と題してYouTubeに動画を公開しました。
(2021年12月)
シャンポール城
屋上に300以上あると言われる塔の再現に悩みましたが、なんとかなりました。
シュリー・シュル・ロワール城
城をとりまく街全体を再現しました。いままでで一番大きなジオラマです。
アゼル・リ・ドー城
城だけでなく、そこに続く遊歩道や広場まで再現しました。
人を数多く配置したら賑わいの雰囲気が生まれました。
ノイシュバンシュタイン城
言わずと知れた有名なドイツの城です。
城の回りを囲む森や吊り橋、滝や小川なども再現しました。西洋盆栽のような感じになりました。
まとめ
完成したジオラマを写真に撮り、ことあるごとに知人に見せたら本物と見分けがつかなかったです。
せっかくなので本物を見たくなりこの夏、フランスまで行って現物と対面しました。ただ普通に見るだけでは物足りないので滞在中、シェール川のクルーズ船からも城を観察してきました。
川の上から見た写真はあまり無いのでまた興味がわきました。
また今まで制作したジオラマを市民交流プラザで一堂に展示しました。
(2021年10月)