ソフトバンク・KDDI通信障害から考える、大規模災害時の通信・連絡手段の備え
2022年7月のKDDIの通信障害を受けて、ローミングの導入が具体的に進みそうです。
全面復旧まで86時間かかったKDDIの通信障害を受けて、金子総務大臣は通信障害などが発生した場合、一時的に他社の通信網を利用できる「ローミング」の導入について検討を進めることを明らかにしました。
ソフトバンク(2018)・KDDI(2022)の通信網で全国規模の通信障害が発生
先日の通信障害、その時あなたは何をしましたか?
- 何度もLINEやメールを送り直そうとした
- 何度も再読み込みした
- 何度もスマホの電源を入れ直した
という方も多いのではないでしょうか。
先日の状況なら、無料Wi-Fi環境に移動する、公衆電話を使う、人に道を聞く、などである程度は対応できたでしょう。
おそらく一番大変だったのは「不安」ではないでしょうか。
大事な人と連絡が取れない、大事なことが調べられない。まるで自分だけがこの世に取り残されてしまったかのような…。
私は点検で遅れていた電車に乗っていて、乗換案内を調べていたところ、突然圏外に。他路線に乗らせないための鉄道事業者の罠かとすら思ってしまいました。あり得ないことですが、普段の生活がなんとなく揺るがされた場合というのは、それくらいの不安と猜疑心が起こりやすくなり、やらなくても良い行動をしたりしてしまいがちです。
いざという時のため、こうすれば大丈夫!と思える備えをしておきませんか?
なお、この記事は2018年のソフトバンクの通信障害を受けての記事でしたが、2022年にはKDDIでさらに大規模な通信障害が数日にわたって発生しました。通信障害時の備えは、今後も起こりえるリスクとして対策を考える必要がありそうです。
災害時無料Wi-Fiなど、大規模災害時に使える通信手段を知っておく
災害時の連絡手段「無料開放災害時統一SSID 00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)」
災害時に無料で、しかもほとんど手続きなしで利用できるWi-Fiサービスが 00000 JAPAN です。
災害時の重要な通信インフラとして定着してきているようですが、緊急時の利便性確保を優先とし、通信が暗号化されていないため、使う際は注意が必要です。
また、通信の途中で盗聴や偽のアクセスポイントを使った情報の取得、フィッシングサイトへの誘導、紛らわしいSSID(000000JAPANなど)への誘導などが考えられます。
災害時に気が動転した中で、冷静な判断は難しいでしょう。できるだけ、このような混乱期には個人情報を入力しないこと、ネットバンク等を使用しないことで、自衛するしかありません。
なお、00000JAPANは、2019年台風19号の際に首都圏でも運用が行われましたが、Wi-Fiが拾えるエリアは限られています。「公衆無線LANスポット」といわれるエリアのみ、例えば大きな駅、公的施設、大手商業施設等になります。ご自宅で探そうとしても拾えず、バッテリーの無駄遣いにつながりますので、覚えておいてください。(2019年10月16日追記)
大規模災害時の連絡手段は、電話よりも「災害用伝言サービス」、「SNS」、「メール」、「通話アプリ」
災害用伝言サービスの活用
災害時災害用伝言サービスにはいくつかの種類があります。
下記の図は横にフリックして全体を見ることができます。
災害用伝言ダイヤル | 災害用伝言板 | 災害用伝言板 | 災害用音声お届けサービス (ソフトバンクの場合) |
|
---|---|---|---|---|
登録方法 | 171をダイヤル | 各社携帯メニューから | web171 | アプリ |
アクセス環境 | 電話 | 3G/4G/Wi-Fi | 3G/4G/Wi-Fi | 3G/4G/Wi-Fi |
登録可能番号 | 固定番号(被災地の市外局番) | 携帯電話番号 | 全ての電話番号 | 携帯電話番号 |
保存期間 | 48時間 | サービス終了時まで | 48時間 | 10日 |
登録件数 | 10件まで | 10件まで | 10件まで | 20件 |
登録時間 | 30秒 | 100文字 | 100文字 | 30秒 |
その他 | 固定電話が無い家庭では使えない。 録音時間が短いためポイントを絞って話す。 |
予め、送り先のメールアドレスを 登録しておくと便利。 |
事前にアプリのダウンロードを しておいたほうが良い。 |
1.災害用伝言ダイヤル(171)
被災地の方が、加入電話や公衆電話から自宅の固定電話番号を入力。安否情報や伝言を音声で録音。全国から被災地の方の電話番号を入力することで伝言を確認できます。
※固定電話の電話番号が必要
2.災害用伝言板
被災地の方が、携帯電話などから安否情報や伝言を文字で登録。全国から被災地の方の携帯電話番号を入力することで伝言を確認できます。
各社の災害用伝言板詳細
3.災害用伝言板(web171)
出典:一般社団法人電気通信事業者協会「 ケータイ災害用伝言板」ご利用方法のA4判チラシ」
パソコンやスマホ等から固定電話番号や携帯番号を入力して安否情報を文字で登録・確認ができます。
災害用伝言板との連携により、それぞれの伝言板に登録された安否情報を横断的に探索可能となったそうです。
NTT東日本災害用伝言板(web171)
NTT西日本災害用伝言板(web171)
4.災害用音声お届けサービス
スマホの専用アプリを利用し、同じ通信事業者の対応端末に音声メッセージを送信できます。NTTドコモ、au、ソフトバンクでサービス提供が行われています。
- NTTドコモ・・・「災害用キット」
- au・・・「au災害対策」
- ソフトバンク・・・「災害用伝言板」
【ソフトバンクの災害用伝言板】
災害用伝言板サービスは体験利用ができますので、ぜひ一度お試しください。
- 毎月1日・15日(00:00~24:00)
- お正月三が日(1月1日00:00~1月3日24:00)
- 防災週間(8月30日9:00~9月5日17:00)
- 防災とボランティア週間(1月15日9:00~1月21日17:00)
「今日は肉が食べたい」「今日はお花を買ってきて」など、自分にとって嬉しいミッションや、聞いた人だけにわかる合言葉を入れてみたり、できた人には晩御飯のからあげ1つ追加、など遊びを取り入れてみてもいいかもしれません。
音声通話以外の通信手段
1.SNS
フェイスブック
災害時には「無事です」などのボタンが設置されます。それを押すことで、見た人に通知が上がります。
メッセンジャー
誰が既読になったかわかりますので、グループを作成しておいてもいいでしょう。その際は、本当に必要な情報だけをやり取りしてください。
ツイッター
緊急連絡用のアカウントを作り、フォローしておいてもらうというのも手です。ひとつのアカウントを家族や社員で共有してもいいでしょう。「設定」→「ユーザー情報タブ」で、「ツイートプライバシー」の「ツイートを非公開にする」にチェックを入れておけば、家族しかツイートを読むことはできません。
LINE
LINEにGPS機能があることをご存じですか?
トーク画面左下の「+」から「位置情報」を選ぶと地図が表示されます。(※GPS機能をONにしておくことが必要)地図上に現在地が表示され、そのまま送ることが可能です。
LINEで一斉送信する方法
①送ったメッセージを長押しし、「転送」を選びます。
②転送するメッセージを選択すると、右下に転送したいメッセージ数と「転送」ボタンが出ます。
③送りたい人を選択。画面下に選んだ人が表示されます。
④最後に、右上から「送信」します。
他の人には誰に送ったかわかりませんし、1人1人に送られているので、以降のやりとりは通常のLINEと同じように続けることが出来ます。
2.メール
災害時には、音声通話よりもパケット通信を利用するメールの方がつながりやすくなります。ただし、長文のメールや、大量の安否確認メールの受信は、携帯電話端末の電池を消耗させます。手短な文面、不要不急でないものは控えるなどの配慮もお互いに必要です。
3.メモ
犯罪を避けるためにも最後の手段ですが、避難所などへ避難する場合、紙とマジックなどで居場所の伝言を残します。油性マジックとマスキングテープや養生テープを持っていてもいいかもしれません。
4.一斉送信の安否確認システム
メールの一斉配信を行ったり、状況を書き込むことができるシステムの導入も一つの手です。社外にいても、スマホや携帯電話から管理・閲覧でき、会社や部署の送り分けもできます。掲示板として情報共有ができたり、安否確認の集計までしてくれるものもあります。アクセス負荷解析レポートを出してくれる会社もあります。
各社でサービスが提供されていますので、比較検討されてみてください。
家族や親せき単位の登録も可能です。
5.通話アプリ
Skype、LINE電話、FB messenger、Viber messenger等、インターネット回線を利用して会話ができます。 事前にアプリをダウンロードしておくこと、連絡をとりたい人のIDを追加しておくことなどが必要です。
Skypeの無料版では、Skypeを利用している人同士としか通話はできませんが、有料版では、Skypeから固定電話や携帯電話に電話をかけたり、その逆も可能になります。
また、有料版にはプリペイド式と月額固定方式がありますが、大規模災害発生時は、運営側の措置により数日間、Skypeからの通話が無料になることがあります。その際は、電話回線も利用することになるため、Skype同士の通話よりつながりにくくなることが考えられます。
それでもやっぱり電話を使いたい場合
会社の電話番号や、家族の携帯の番号を覚えていますか?
私は携帯の電池が切れた時のため、いざという時に連絡をとりたい人の、名前と電話番号を紙に書いたものを携帯しています。万が一、自分自身で連絡がとれなくなった場合にも安心です。
- 家族の携帯番号
- 自身やパートナーの実家の電話番号
- 子どもの所属先(保育園、幼稚園、学校、塾、預け先など)の電話番号
- 会社の電話番号
- 上司や同僚の携帯番号
特に、パートナーや自身の実家の電話番号は、連絡の中継拠点として役立つこともあります。いざという時どこに連絡を取らねばならないか、考えてみてください。もちろん個人情報ですから、盗難や紛失には十分注意してくださいね。
公衆電話、どこにあるか知っていますか?
即答できる方は少ないのではないでしょうか。 ポケベル世代にはなじみ深い公衆電話ですが、使い方を忘れた人や、使ったことがない人も多いのではないでしょうか。(余談ですが、ポケベルは、2019年9月末をもってサービスを終了しました。)
NTT東日本の公衆電話設置場所検索で一度お近くの公衆電話の場所を調べておかれるといいですね。
10円玉、持っていますか?
さて、いざ公衆電話をかけようと思った時、都合よく財布に10円玉が何枚か入っているでしょうか。
良かった!たった1枚ですが、ありました。さて、その1枚の10円玉で、何分通話ができるかご存知ですか?
- 区域内、午前8時~午後11時まで、57.5秒
- 160km以上、午前8時~午後7時まで、8秒
※携帯電話は通信事業者により異なります。
出典:NTT西日本公衆電話料金
160kmというのは、東京から静岡県藤枝市あたりになります。
「あ、もしもしお母さん?〇〇だけど、今東京で大きな地震があって、私は無事なんだけど」
例えかぶせるように話してくるオカンの声をさえぎって一方的にしゃべったところで、8秒で話せることはこれくらいです。
しかも東京で地震があった、やっとわが子とつながった、となると、オカンという生き物が黙っているはずがありません。
なお、停電時はテレホンカードは使えません。グレーのデジタル電話はバッテリーを搭載していますが、消耗後は硬貨しか使えなくなりますので、10円玉は何枚か持っていることをおすすめします。
災害時には、携帯よりも公衆電話の方がつながりやすくなります。
大規模災害時はお金が無くても公衆電話が使えるようになる!?
大規模災害時はお金が無くても使えるようになることがあります。
総務省HP「災害救助法が適用される規模の災害が発生し、かつ広域停電が発生するなど被災者の方々の通話を確保することが必要とNTT東日 本・NTT西日本が判断した場合には公衆電話からの通話を無料とすることがあります。」
出典:総務省「公衆電話の使い方と使用方法」
ただし、アナログ式公衆電話は、一旦お金が必要です!通話を終えた後に戻ってきます。
通常は使えませんが、災害時用公衆電話(特設公衆電話)というものもあります。
NTT東日本「事前配備の災害時用公衆電話(特設公衆電話)の設置場所」
公衆電話の盲点
公衆電話を着信拒否にしていないでしょうか。留守電がある場合はまだいいのですが、留守電サービスを使っていない人も多くいます。
先日携帯を忘れ、公衆電話から電話したのですが、相手は出てくれませんでした。わが身を振り返ってみても、確かに、出ませんね…。
今回のように相手キャリアの通信がダウンしている場合や、電源が入っていない、電源が落ちてしまった、圏外にいるなど、相手の状態を考慮し、つながらない場合も必要以上に不安にならないことも大切です。
普段から携帯すべき4つのアイテム
1.現金
10円玉、100円玉、ある程度の現金。高額紙幣ばかりだと、おつりが無くなり使えなくなる可能性もありますので注意。水、食料、タクシー…。お金は必要です。おこづかい方式の旦那さん、ここは奥様に交渉が必要です!チャック袋にわけているのは、普段使ってしまわないため、そして、雨でぬれてしまわないように。
2.スマホの予備バッテリー
普段使うことが無い人は、実際に使ってみてください。私の非常持ち出しリュックの中には、電池の予備はあるのに、ケーブルが入っていませんでした。いざという時に使えないものは、無いのと同じです。
3.地図
土地勘の無い場所へ行く際は持っていると安心です。ハザードマップもあわせて確認。これについてはまた後日詳しく述べたいと思います。
4.愛
いつも、大事な家族や社員は今どこでどうしているかな?と気にかけていてください。意識が向けば、自ずと行動は変わります。いざという時不安にならないためには、普段からの信頼関係が物を言います。
ちなみに、発災後すぐに「徒歩帰宅」を考えるとどうなるでしょうか?「あなたは30km歩いて帰れますか?「災害時の徒歩帰宅」を考える」もご覧ください。
自分と大切な人の命を守れるのは誰?防災はトップダウンが鍵
家族、社員との普段からの意識共有が重要
上記のように、さまざまな通信連絡手段を述べてきましたが、いずれも使えないという可能性は少なくありません。その際に、普段から家族や社員とコミュニケーションをとっておくことが何より重要です。
もちろん、会社のさまざまなリソースが大丈夫か、いかに通常通り業務を続けていくかについても考えておかねばなりませんが、まず何はなくとも、大切な人たちの安否。これさえ確認できれば、後のことはなんとでもなります。緊急時、一番の敵は、不安なのです。
- 普段どのような場所にいることが多いかを、親しい人で把握しておく
- 震度4以上の地震がおこったら、どの方法で何時間以内に連絡をする、などルールを決めておく
- 連絡が無い場合は各自判断し、どのように行動するかを決めておく
話し合って、自分たちのルールを決めてください。
できるだけハードルを下げてスタートする
大事なのは、「普段から使っている物を利用し、できるだけ全員の負担が少なく、短時間で確認できる方法」にすることです。
普段から利用していないものであれば、せっかくなのでこれを機に使えるようになってしまうと、スキルアップにもなります。
社員の無事の確認、集計をどのようにするのがベストか、ぜひ一度じっくりと考えてみてはいかがでしょうか。
防災はトップダウンでスピードUP
残念ながら、防災は個人のレベルではただの個人の備えで終わりがち。社員ひとりひとりが「こうすべき」「こうしたい」と思っても、進まないことが多々あります。逆に、「誰かがなんとかしてくれる」としか考えていない人も多いでしょう。
社員の防災意識・リスク回避意識を高めるには、やはり社長さん自ら進めることが一番早いです。
災害は地震だけではありません。墨田区は火災や水害も想定されます。台風で電車が止まりそうだという時の判断を決めておくのも良いでしょう。しかし最後は、現場判断を優先するとしておくことも大事です。
最後はアナログが勝つ
どんなにIT化が進んでいようと、やはり最後はアナログです。ご自分は大丈夫でも、家族や社員は大丈夫でしょうか?
どれだけ準備してもきりがないのも事実です。しかし、一度頭の中でシミュレーションしてみることだけでも、全然違います!想定外をある程度、想定内にしておくことで、それ以上のことが起こっても対応できるのです。これは普段の業務においてもいえることですよね。
まずは今日1つだけ、なんでもいいです。小さな小さな一歩でも構いません。アプリのダウンロードだけでも、アプリを調べるだけでも。家族の携帯の番号を書きだすだけでもOKです。何かひとつ始めましょう。
大事な家族や社員、その社員の家族の命までも守れるのは、社長さん、あなたです!
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