『「国土の長期展望」 中間とりまとめ』 から推察されるマーケティング施策
平成23年2月21日に国土審議会政策部会長期展望委員会より出された『「国土の長期展望」 中間とりまとめ』 が非常に今後の日本におけるマーケティング施策において参考になったのでここにまとめます。
きっかけとなったのは「ピーター・ドラッカーマーケターの罪と罰」第4部の新製品・サービス導入の第二章「人口動態の変化を利用する」の箇所で参考教材となった資料です。
毎月1回浜松町で行われている「ドラッカーマネジメントを実践する会」で教材となった資料を元にまとめました。
顧客のニーズなどのトレンドは人口動態と構造に起きたことを分析することでほぼ碓実に予想可能
ドラッカーは、恐らく唯一、人口の変化だけがマーケターが分析し、将来の市場と市場行動を正確に予想できる要因だということに気付き、購買力、購買行動、顧客のニーズなどの大きなトレンドは皆、人口動態と人口構造に起きたことを分析することでほぼ碓実に予想できることを発見した。
上記のドラッカーの発見を受け『「国土の長期展望」 中間とりまとめ』 から推察されるマーケティング施策を模索してみました。
詳細について下記ご参照下さい
『「国土の長期展望」 中間とりまとめ』
- 第Ⅰ章 長期展望の前提となる大きな潮流
- 第Ⅱ章 地域別にみた人口減少及び少子高齢化
- 第Ⅲ章 人口、気候等の変化がもたらす人と国土の関係への影響
- 第Ⅳ章 今後実施すべき複数シナリオによる検討の例
第Ⅰ章 長期展望の前提となる大きな潮流
人口減少と高齢化
- 我が国の人口は長期的には急減する局面に。2050年には日本の総人口は3,300万人減少国立社会
- 2050年には年間110万人の自然減少
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成18年12月推計)」によれば、日本の総人口は、2004年の1億2,784万人をピークに、2100年には4,771万人へと今後100年間で100年前(明治時代後半)の水準に戻っていくと見られている。この変化は日本史上千年単位でみても類を見ない、極めて急激な減少である。
「人口減少と高齢化」から考えられる推察
人口が減少するのに対し、人でが足らなくなり移民を受け入れざるをえないと考えます。更にグローバル化、国際化が進む中で外国人をターゲットしたサービスが増えると想定されます。
気温の上昇等の気候変動
- 気温の上昇
- 降水量の増加
- 積雪量の減少
気温の全国平均値は、2000年に比べ、2050年には2.1℃(2100年には2.8℃)上昇する可能性が示されている。地域別にみると、中部地方北部において、気温の上昇幅が大きい。
「気温の上昇等の気候変動」から考えられる推察
温室効果ガスの削減のための排出量取引が国や企業間でさらに活発に取引されるのではないかと考えます。
世界の状況変化とグローバル化の進展
- 2030年に中国の人口がピークを迎え、インドが中国を抜く
- 我が国への投資額は低調。日本は高等教育修了者、留学生の流入・流出数ともに低水準
今後国土政策を考えていく上では世界の動向も踏まえることが益々重要になってきていることから、長期展望に当たっては、日本国内だけではなく、海外との関係性も重要な要素であるが、今後の世界の状況を長期的に見通すことは困難なことである。
「世界の状況変化とグローバル化の進展」から考えられる推察
人口減少と関連するが、移民を受け入れる際の「教育」の面において平等な教育を施す必要性があるのではないかと考えました
地域別にみた人口減少及び少子高齢化
- 国土の大部分で人口が疎になる一方、東京圏等に集中が起こる
- 都市圏レベルでみても、多くの圏域で人口が大きく減少
- 市区町村別では、小規模市区町村ほど人口の減少率が大きい
- 過疎化が進む地域では、人口が現在の半分以下に
- 2050年までに居住地域の2割が無居住化
- 人口が疎になる地域は、農林業利用地・規制白地に多い
- 所有者不明な土地が増加するおそれ
- 高齢人口は2040年まで増加。特に東京圏で増加が突出
- 高齢化率の上昇幅は、東京圏、名古屋圏、沖縄県で緩やか
- 高齢者の中でも年齢階層により増加率が異なる
- 総世帯数の減少は人口減少に比べ緩やか
- 単独世帯、特に高齢者単独世帯が増加
- 東京圏・名古屋圏で大幅に増加する高齢者単独世帯
- 総人口よりも減少数の大きい生産年齢人口。地域別動向に大きな差
- 人口ピラミッドは2050年には三大都市圏、地方圏ともに逆ピラミッド型に変化する
- 人口が疎になる中、国土の大部分で地域の扶助力が低下
- 小規模な都市圏、生活圏での大幅な人口減少への対応
- 過疎化が進む地域での急激な人口減少と無居住化の進行への対応
- 高齢者単独世帯の増加等への対応
全国平均の人口減少率(対2005年比で約25.5%)を上回って人口が減少する(人口が疎になる)地点が多数となっている。特に人口が半分以下になる地点が現在の居住地域の6割以上を占めるのに対し、人口が増加する地点の割合は2%以下であり、東京圏と名古屋圏に多い。
「地域別にみた人口減少及び少子高齢化」から考えられる推察
人口減少、空き家の増加、都市圏の集中化、都市圏のおける更なる高齢化、過疎化。やはり、年配の方に向けたサービスや不要になった土地の活用が考えられます。過疎化が進む地方への人口の分配施策が政治として必要であると思います。
人口、気候等の変化がもたらす人と国土の関係への影響
ライフスタイル・生活分野
- 平均的な就業、婚姻等の時期は4~5年遅くなる
- 2050年までに総生活時間は2割、総仕事時間は4割減少
- 総余暇時間の減少は人口減少に比べ緩やか
- 住宅需要は将来的に減少
- 誘導居住面積を基にした住宅のストックと需要に乖離
- 生産年齢人口の大幅減少に伴う総仕事時間の減少への対応
- 人口構成、世帯類型の変化に対応した住宅の質的な需給バランスの確保
「ライフスタイル・生活分野」から考えられる推察
人口減少に遠ない住宅の需要が減少され、土地の価値が都市圏では一極集中するが地方では値崩れが大幅に進むと考えられます。空き家も増加し、空き家や土地を活用するサービスなどが考えられます。
産業分野
- 地域の人口減少により、医療など生活関連サービスの確保が困難な地域も
- 生活利便施設へのアクセスが困難な高齢者単独世帯が急増
- 人口規模・密度が低下すると行政コストが増加
- 医療・介護ニーズは東京圏等で大幅に増加
- 産業構造は、例えばサービス産業のウエイト変化をどう見るかで地域別の動向は大きく異なる
- 多様な主体による地域づくりが増加する可能性
- 産業の将来展望には3つの見方が存在
- 地域人口の減少に伴い生活関連サービス産業の撤退が進む
- 地域が自立的に発展していくための産業のあり方
「産業分野」から考えられる推察
介護、医療ニーズが都市圏での増加が進む一方、過疎化地域および高齢者世帯への宅配サービスが考えられます。
国土構造分野
- 国土基盤ストックの維持管理・更新費は倍増
- 特に市町村事業の維持管理・更新費の増加が顕
- 1人当たりの維持管理・更新費は人口が少ない県で増加が顕著
- 維持管理を支える人材の高齢化と減少
- 災害時の死傷者に高齢者が占める割合は大きい。高齢者世帯の割合が大幅に増加
- 災害リスクが高いエリアでも高齢者世帯数が増加
- 情報通信技術の国土への活用
- 今後顕著に増加する国土基盤ストックの維持管理・更新需要への対応
- 災害リスクの高いエリアでも高齢者世帯が増加
- 新たな情報通信技術活用の検討
「国土構造分野」から考えられる推察
市区町村サービスの維持管理費用が人口減少に伴い増加する中で是非IT技術を活用した効率化を考えたい。
国土資源・環境分野
- 植生帯ポテンシャルが変化し、生態系への影響が発生
- 温暖化により、野生生物による人への影響が増加
- 米は二期作可能地が増大。少子高齢化・人口減少により主食作物(米・小麦)に対する国内摂取需要は減少
- 林業の主要樹種の生育ポテンシャルの分布が大きく変化するおそれ
- 里地里山から人間がいなくなる
- 年間を通して見ると水資源賦存量に対する水使用量の比率は一時的に小さくなる
- エネルギー消費量・CO2排出量の部門別構成は地域ごとに異なった特徴
- 自然エネルギー等のポテンシャルは各地に存在
- 急激な気候変化に対する動植物の適応リスク等の生態系への影響
- 国内摂取需要を踏まえた農地、生育ポテンシャルを踏まえた林地のあり方
- 無居住化と気候変化の両面の変化にさらされる里地里山への対応
- 水ストレスの変化が国土に及ぼす影響
- 各地域でのエネルギー構造の見直しとCO2排出量の削減に向けた検討
「国土資源・環境分野」から考えられる推察
環境問題、人口減少において里山とうから人がいなくなることを掛け合わせると里山等での太陽光発電における発電ニーズがあるのではと考えます
今後実施すべき複数シナリオによる検討の例
出生率の動向が「国土の姿」に与える変化の検討
人口の長期的な水準を考える際には、出生率のあり様が当然のことながら将来を左右する要素となる
社会移動を変化させた人口の地域分布の変化の検討
人口の地域分布は出生率の地域差とともに社会移動の想定によって大きく変化する。地域間の所得格差等の移動要因となり得るものが変化した場合の社会移動を想定し、その結果として人口分布はどのように変化するのか、異なる移動シナリオによる国土の長期展望を行うべきである。
人口減少・高齢化が暮らしやライフスタイルに与える変化の検討
人口減少と高齢化が進み、人口規模・構成が変化していく中、将来的にも、我が国社会の活力を維持していくためには、若者や女性、高齢者など様々な人々が活躍できる社会をいかに構築していくかが鍵となる。 若者の働く環境が厳しいまま推移すると、長期的には、経済的格差の拡大や出生率の低下などの弊害をもたらすおそれがあり、国土政策の観点からも若者の就職率や非正規雇用の地域的な動向を分析し対応策を検討する必要がある
交通分野のイノベーションが国土構造の変化や地域に与える影響の検討
交通政策審議会において審議されている中央新幹線の走行方式として超電導リニア方式が採択された場合、三大都市圏間を約1時間で結ぶことが可能となり、我が国の国土構造や地域に極めて大きな影響を与えることが想定される
まとめ
国土審議会政策部会長期展望委員会が平成23年にまとめられたもので多少古いがドラッカーが言う「唯一、人口の変化だけがマーケターが分析し、将来の市場と市場行動を正確に予想できる要因」である点において『「国土の長期展望」中間とりまとめ』は多くの気付きを与えてくれる資料であると思います。非常にマクロ的ではありますが、考えるヒントを与えてくれる非常に良い資料であると思いました。
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