本当に恐ろしい事態になる「優良誤認」|絶対に守らなくてはならない景表法の話

景品表示法(景表法)は、商品やサービスの「不当な広告表示」と「過大な景品提供」を禁止し、消費者が自主的かつ合理的に選べる環境を守るための法律です。
すべての事業者が対象となり、違反すると措置命令・課徴金などのペナルティが科されます。
つい先ごろ(2026年3月)、イモトのWiFiで知られるエクスコムグローバル株式会社に対し、景品表示法(優良誤認)に基づく課徴金納付命令が下されました。課徴金の額は、 「令和8年10月13日までに、1億7262万円を支払わなければならない」という、とても厳しいものです。
では、エクスコムグローバル株式会社はいったい何をしてしまったのでしょうか。まずはここから解説していきます。
安易な「No.1表示(広告)」が引き起こした結末
「業界No.1の安さ」
「売り上げナンバーワン!」
「お客様満足度第一位!」
といった、いわゆるNo.1広告は、かつては様々な場面でよく目にしました。しかしこれは景表法において非常に危険な表現となり、今回のエクスコムグローバル株式会社への課徴金納付命令も、まさにこれが主な原因です。
消費者庁による「エクスコムグローバル株式会社に対する 景品表示法に基づく課徴金納付命令について 」の詳細
※消費者庁「エクスコムグローバル株式会社に対する 景品表示法に基づく課徴金納付命令について 」
No.1広告に代表される最上級表示を行うには、客観的な裏付けとなる「合理的根拠」と、それを「誰にでも分かるように広告内に明記すること」の2点が絶対条件になります。
この2点がしっかりとあれば違反にはなりませんが、確固たる根拠もないままに、安易に使用した場合、景表法違反となってしまいます。
「うちの業界ではこれくらいの表現は普通だから」
「競合もやっているし、少し盛っただけ」
というような甘い感覚で、さしたる根拠やデータもないままに使ってしまった結果が、今回のエクスコムグローバル株式会社の課徴金納付命令です。
景品表示法の「優良誤認」の取り締まりは、近年凄まじい厳しさを見せています。しかも、かつては大手企業だけがターゲットになると思われていましたが、現在では中小企業やECサイトなどの個人事業主、D2Cブランドにも容赦なくメスが入っています。
そして「悪気はなかった」「知らなかった」という言い訳は一切通用せず、粛々と命令が出されます。
広告やチラシを作る時、ブログなどで商品説明や資料を掲載する時、その表現は景品表示法に抵触しないかどうかを必ず確認してください。
2026年度 景品表示法関連報道発表資料
| 日付 | 2026年の景品表示法関連報道発表資料(PDF) |
|---|---|
| 2026/02/17 | 株式会社くまのみに対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について |
| 2026/03/03 | 株式会社ソシエ・ワールドから申請があった確約計画の認定について |
| 2026/03/12 | エクスコムグローバル株式会社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について |
| 2026/03/17 | 太陽光発電システム機器等の販売施工業者4社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について |
| 2026/03/26 | エステティックサロンの運営事業者3社に対する景品表示法に基づく措置命令について |
| 2026/04/28 | 尿失禁対策用の下着販売事業者2社に対する景品表示法に基づく措置命令について |
※景品表示法関連報道発表資料 2025年度及び2026年度から抜粋
「優良誤認」とは? 基準は「消費者が見たとき」の印象!
そもそも優良誤認とは何でしょうか。消費者庁によると、下記の内容が記載されています。
事業者が、自己の供給する商品・サービスの取引において、その品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、
(1)実際のものよりも著しく優良であると示すもの
(2)事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの
簡単に言えば、商品やサービスの品質、規格、その他の内容について、実際のものよりも「著しく優良である」と消費者に誤認させる表示のことです。
これは「嘘をついていなければいい」ということではなく、「事実に則っているかどうか」ということでもありません。
優良誤認の判断基準はあくまでも、一般消費者がその広告を見たときにどう受け取るかということなので、一切嘘を書いていなくても、言葉の組み合わせやデザインによって、消費者に「実際より凄そうだ」と誤解させる表現になってしまえば、違法になってしまうのです。
優良誤認とみなされやすい表現の具体例
景品表示法において「優良誤認」とされやすい表現の代表として、以下の言葉があります。
1. 絶対的表現
客観的な裏付けがないまま、すべてのケースで効果を保証するような表現。
NGワード: 絶対、100%、必ず、完璧、確実、万全、安心、安全など
注意点: 健康食品や化粧品などで「必ず痩せる」「100%シミが消える」といった表現は、個人差があるためNGとなります。また、安心や安全といった完全な実現が不可能な表現も基本的にNGです。
ちなみに、この記事のタイトルで「絶対」という単語をわざと使用しています。通常はNGワードですが、景表法は絶対に守らなくてはいけない法律ですので、こういった使用法は問題ないという例にしています。
2. 根拠のない最上級・No.1表現
客観的な調査データや客観的事実がないのに、一番であるかのように見せる言葉です。
NGワード: 業界No.1、日本一、最大級、業界最安値など
注意点: 最上級表現を使う場合は、調査機関、調査時期、アンケートの母数などの客観的データを明記する必要があります。
3. 他社製品より優れていると誤認させる表現
比較対象を明確にせず、競合商品よりも自社製品が圧倒的に優れていると印象づける言葉です。
NGワード: 他社より優れている、圧倒的、抜群、比べ物にならないなど
注意点: 比較する際は具体的な比較対象と客観的な試験結果を示す必要があります。
4. 専門的・科学的であると誤認させる表現
明確な医学的・科学的根拠(エビデンス)がないのに、効果が医学的に実証されているかのように見せる言葉です。
NGワード:医学的に実証された、特許取得(※関係ない部位や効果への誇張)、マイナスイオン、〇〇博士推奨など
5. 小さな文字による打ち消し表示
メインの大きな文字で「〇〇するだけで痩せる!」と書き、小さく「※効果には個人差があります」「※個人の感想です」などを添える手法です。
消費者が全体として誤認するような過剰な広告表現は、打ち消し表示があっても優良誤認と判断される場合があります。
優良誤認がもたらす「4大損失」
景表法の優良誤認に抵触すると、企業には売上の減少どころではなく、極めて重い損失が待ち受けています。
1. 措置命令と「社名公表」
違反が認められると、消費者庁や都道府県から「措置命令」が出されます。これは「その広告を今すぐやめろ」「再発防止策を講じろ」という命令ですが、同時に企業の社名と違反内容が、ニュースや行政のホームページで完全に公表されます。
2. 巨額の「課徴金(ペナルティ金)」
優良誤認には、強力な金銭的ペナルティである「課徴金制度」が適用されます。その額は、違反表示を行っていた期間の対象商品の売上高の「3%」。 重要なのは、利益の3%ではなく「売上高」の3%という点です。例えば、薄利多売で利益率が低い商品であっても、売上が10億円あれば、3,000万円のペナルティ金が強制的に徴収されます
3.「不実証広告規制」と「自主返金」
消費者庁から「その表示の根拠を出しなさい」と求められた場合、企業は15日以内に合理的な実証データを提出しなければなりません。
15日という期間は、新しく実証実験を始めるにはあまりにも短く、データを出せないことも考えられます。
そしてデータを出せなければ、その時点で自動的に「優良誤認」とみなされます。
また、課徴金(3%)を免除・軽減してもらうためには、企業自らが「自主返金計画」を立て、購入した消費者全員に一斉に返金手続きを行わなければなりません。そのための事務手数料や郵送代、コールセンターの設置費用などで莫大なコストもかかります。
4.「刑事罰」
行政からの措置命令を無視したり、従わなかったりした場合は、刑事罰が科されます。
経営者や担当者個人に対しては「2年以下の懲役または300万円以下の罰金」、そして法人に対しては「最大3億円の罰金」が科される規定になっています。
まとめ:「攻めの宣伝」の前に「守りの知識と理解」が大切
ビジネスにおいて、他社との差別化を図り、商品の魅力をアピールする「攻めの宣伝」は不可欠です。しかし、その表現が法律のラインを越えてしまっては、せっかくの努力が無駄になるどころか、むしろ大きなマイナスです。
キャッチコピーを1行書くとき、バナー画像を1枚作るとき、必ず景表法のことを思い出してください。景表法を遵守することは、消費者を守るためであると同時に、あなたの大切な会社と従業員を守るための防衛策なのです。
最後に、東京都の「東京くらしWEB)」が掲載している、「事業者向け法令学習コンテンツ 《景品表示法》」をご紹介します。クイズ方式で景表法の基本がわかる仕組みになっているので、景表法の理解度を測るために、ぜひ一度、基礎編からチャレンジしてみてください。
